共通テスト問題のほうが二次試験より厄介だったりする話

 「読みの練習はした、句法・文法もバッチリ、設問のネライもまあわかった、さあ選択肢を選ぼう」とすると「……全部ダメ。どれも正解とはいえない。」ということがあります。
 こういうとき、設問には「最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。」と書いてあるので、泣く泣くダメな選択肢から比較的マシなものを探すハメになります。とはいえ、「比較的マシ」なわけだから、「消去法で……」とやると振り出しに戻って二択地獄に落ちてしまい、どっちもあまり良くはないし、どっちもどっちなような気がして選べない、となってしまいます。
 二次の記述問題ならとても正解とはいえないけれど、選択肢問題では選ばざるをえない選択肢というのがあります。それはワザと肝心な部分を婉曲表現してある正解選択肢で、一端ちゃんとした正解のイメージをもっていないと何をいっているかわからないというものです。こういう婉曲正解のあるときには、さらに悪質なことに肝心のところはチャンと書いてあるクセに別の部分にそっとウソを混入したワナ選択肢も準備してあったりすることです。
 例えば、センターのころの問題に、本文の前書きには、『そこで半蔵は、その変化を確かめようと旅に出たが、留守中に農民一揆が起こり、急いで帰郷することになる。』とあり、本文の中に、『半蔵も西から帰ったばかりだ。しかし彼は旅の疲れを休めているいとまもなかった。日ごろ出入りの二人の百姓を呼んでA村方の様子を聞くまでは安心しなかった。』と書いてあって、設問は『傍線部A「村方の様子を聞くまでは安心しなかった。」とあるが、半蔵はなぜ「村方の様子」を聞きたかったのか。』となっていました。
 出題意図は、「村方の様子」とは前書きにある「留守中」の「農民一揆」ことだとわかるかという比較的単純なものですが、選択肢は、

① 各地を転戦して帰村した農兵たちを、兼吉、桑作ら村人になじませるために、村の状況を詳しく聞きたかった。
② 村の責任者として、留守の間に起こった事件について、その実情をできるだけ詳しく聞きたかった。
③ 旧くから主従の関係にあったので、兼吉と桑作の不行き届きについて、その内容を詳しく聞きたかった。
④ 六十日の歩役を勤めた七人の若い農兵たちを、どう迎えるか、村の人たちの意見を詳しく聞きたかった。
⑤ 歩役を勤めて帰ってきた若者たちの引き起こした事件であったので、その経過について詳しく聞きたかった。

 とワザと農民一揆とは表現していません。これを「留守の間に起こった事件」とボカして表現した②が正解というわけです。ただ⑤の「歩役を勤めて帰ってきた若者たちの引き起こした事件」ではないことは、この直前の部分に『越後路の方へ行った七人の農兵も宰領付き添いで帰って来た朝だ。』と書いてあって、それでわかるようになっていました。
 これは比較的単純ですが、選択肢型の問題では記述式なら必ず減点になるようなボカシ表現選択肢を選ぶ必要があります。そのためにはボカしてない解答をまず準備してから、それを婉曲表現したものがないか、と準備して選択肢を検討しなければなりません。
記:国語科主任 佐谷健児