医学部 地域枠の本気度

先般、医師不足という大きな課題を抱える新潟県で、より多くの県内従事の若手医師を確保する目的で、県が大学医学部「地域枠」の拡充に向け、調整を行うことにしたそうです。 それだけであれば、さほど珍しい事とも思えないし、我が北海道でも札幌医科大学等で実施しているのですが、新潟県の場合の地域枠とは、その対象の大学が私学にも及んで幅が広い点等、その内容が大きく異なるらしいのです。
つまり、「卒業後 県内の指定医療機関で9年間働くことにより、貸し与えられた修学資金の返還が免除される」という、良くある制度なのですが、その対象となる大学が多く存在している点に特色があります。   県の医師不足が深刻でそれを解消しようと、必死に取り組んでいる様子がうかがえるのです。
即ち、今年度は新潟大学(1,080万円/年)・順天堂大学・関西医科大学・昭和大学(各2,160万円/年)の4大学33人分が設定されていましたが、来年度からはそれら4大学の枠を11人分増やし計44人とし、更に東邦大学・東京医科大学(各2,160万円/年)・杏林大学(3,700万円/年)の私学の3大学(9人分)を新たに追加し、都合7大学53人になる予定らしいのです。 今後、各大学から国に認可申請を行い、全て認められれば正式に決定することになりそうです。 県によると、この制度を活用して現在も県内の医療機関に従事している人は、すでに約80人もいるそうですが、それを大幅に増やす施策で若手医師確保に本腰を入れるという事です。
この話を耳にしたとき、率直に感じた印象として、「立派な施策だなあ」という事と、「北海道は何やってんだ?」という事と、「これくらい大胆なことをやらなければ、いつまで経っても札幌圏等の都市部以外のエリアに医師が不足する歪な状況から脱却できないだろうな」という実にシンプルな感想を持ちました。新潟県は新幹線で首都圏とは近い位置にありますが、寒村の多い地方自治体であることは北海道と同じであって、私大医学部もない道県であればこその窮余の一策ではあると思います。「私大まで広げる」、しかも「大学によって貸与額が異なる」、という柔らかい発想を、何故北海道でも持ちえないのか不思議でなりません。北海道庁の政策立案者の皆さんには、「道庁の危機的財政状況を理由にそれができない」とは言わせたくないのです。私大医学部を創ることに全力投球してくれるのであれば、それでも良いのですが…。

記:情報室長 高縁博