【共通テスト】今年の化学は結局どうだった?
今年の共通テストが終わりました。東大の前で受験生が刃物で刺されたり,トンガ王国で発生した大規模噴火の影響で日本にも津波警報が発表されたりと,本調子で受験できなかった受験生の方も少なからずいたことでしょう。
そして,共通テストの結果も,波乱に満ちたものとなりました。特に,数学Ⅰ・Aについては,平均点が40.25点(1月19日の中間集計時点,以下同じ)と,センター試験の時代から見ても未曽有の難しさでした。
さて,昨年の11月20日のクラズームでは「【共通テスト】今年は難しかった化学。来年は?」という記事を書かせていただきました。そこでは,平均点が上がるという期待はできそうにないと述べました。結果,化学(専門科目)が易化することはありませんでした。それどころか,平均点は49.45点と,昨年の得点調整前の平均点よりも下回る結果となりました。一方で,化学基礎の方は平均点が29.08点と,昨年よりは標準的な問題となりました。
11月の記事では,「化学の問題作成者は手加減する気がさらさらない」と述べました。その言葉通り,今年の化学の平均点はさらに下がりました。しかし,今年の化学の問題を見ると,問題作成者は本当に手加減する気がなかったのかというと,どうやらそうでもない気がするのです。今年に関して言えば,化学の平均点が下がったことに一番驚いているのは,実は問題作成者自身かもしれません。
私がそう思った理由は,化学の問題の題材にあります。今年の化学の問題を見ると,いわゆる「初見の問題」がそんなになかったような印象を受けました。すなわち,それなりに化学の勉強をしているのであれば,どこかで見たことのある問題がほとんどだったのです。昨年の第1日程では目新しい問題が出題された第5問も,今年は「アルケンのオゾン分解」という2次試験で頻出の内容がテーマであり,それぞれの設問も,一度は経験したことがあるはずの問題ばかりでした。それでも平均点が下がったのは,出題の仕方にひねりを加えた問題があったことと,問題の分量が多かったことが主な要因であると思われます。特に,問題の分量の多さは,ただでさえ緊張している受験生にさらなる焦りを引き起こすため,平均点の低下に拍車をかけたのではないでしょうか。
今年の共通テストの化学は,結果的には難しかったですが,問題作成者の配慮はそれなりに感じ取ることができました。それに対して,数学Ⅰ・Aはやはり厳しすぎました。特に,第4問(整数)の最後の設問は,ただでさえ解き方に気づくのに時間がかかるうえに,それに気づいたところで,(11×11×11×11×11×19-1)÷32を計算しなければならないという絶望感に苛まれるというものでした(余談ですが,私はそろばんを12年間習っていたので地道に計算しました。この計算を簡単にする方法があるのだろうかと,YouTubeで解説の動画を見てみましたが,解説の方も「どうしても簡単な計算方法が思い浮かばなかった」とおっしゃっていました)。来年の数学では,もう少し現実的な問題を出題してほしいと思います。
記:数学・理科担当 新保幸希