今更ながら,今年の北大入試理系数学を振り返る

 2022年度に入って1か月が経ちました。今年度大学に合格した受験生も,そろそろ大学生らしくなった頃ではないでしょうか。
 さて,もう5月ではありますが,今年の北大入試理系数学を振り返ってみたいと思います。今年の北大入試理系数学は,まさに天変地異レベルの難易度でした。各大問における,私が感じた難易度および内容は以下の通りでした。

  大問1 やや難(絶対値のついた2次関数についての問題)
  大問2 やや難(数列・ベクトルの融合問題)
  大問3 鬼畜 (指数・対数関数と領域・積分についての問題)
  大問4 やや易(円順列と確率についての問題)
  大問5 普通 (複素数平面についての問題)

 得点を取りやすい問題が後半にあるのは意地悪のようにも思えます。しかし,易しそうか難しそうかは,ほぼ見た目通りという意味では親切でもありました。ですから,試験開始時に問題全体を俯瞰して,即座に大問4と大問5が解けそうだと判断できたかどうかが,合否を分けたと思われます。一方で,
 ・大問1はグラフを考えれば言いたいことは分かっても,答案の書き方に困る
 ・大問2は漸化式を作れなかったら一巻の終わりの上に,漸化式が作れたとしても,その先の計算量が膨大
 ・大問3は(1)は標準レベルだが,(2)は方針が分かっても場合分けが面倒で解く気が失せる
という具合であり,医学部・獣医学部志望でもなければ部分点の寄せ集めで十分だったと言えるでしょう。
 今年の北大入試理系数学では,難易度にも驚かされましたが,さらに驚いたのは,採点講評を見てからでした。採点講評は,現在も北大のホームページでも公開されています。それを見て驚いたのは,出題者側が「大問1,2,5は比較的易しく,大問3,4は手こずると考えていた」ということでした。そして,採点の結果は,上で私が述べたとおり,「大問1,2の出来が悪かった反面,大問4の結果は良かった」とのことでした。すなわち,5つある大問のうち3つにおいて,出題者の予想と採点結果は相反していたというわけです。
 出題者は受験生を直接指導しているわけではないので,予想と採点結果が異なることは仕方がありませんが,ここで気をつけておきたいこと以下のことです。すなわち,受験生(さらには塾・予備校講師)にとってある問題は簡単で,ある問題では難しいと感じても,数学者からすればどちらも取るに足らない問題なのです。ですから,来年の北大理系数学が易しくなると考えるのは,非常に安易で危険だと言えるでしょう。
記:数学・理科担当 新保幸希