他人を上回ろうという競争意識

 受験は自分との戦いであるとよく言われますが、結局は他の受験者と合否を争うものです。受験において「他人に勝とう」という意識は勉強のモチベーションを維持する上で重要な考え方だと思います。もちろんここで言う「他人」とは同じ学校の同じクラスの他の人という意味ではなく、自分と志望校を同じくする他の受験者たちです。今回は、勉強のモチベーション維持という観点から、他人に勝つということについて書いてみます。
 勉強をやっているかどうかの一番単純な指標は勉強時間です。例えば難関大に合格する平均的な受験生は、学校がある日は毎日6時間(学校の授業は除く)、休日は10~12時間くらいは勉強しているはずです(独自調査)。勉強の取り組み方を度外視して極端に単純化すれば、今の時点で合否のボーダーライン(B判定など)上にいる人は、この勉強時間を維持できれば他の受験者に追い抜かされない、つまりそのままリードを維持して合格できることになります。これは裏を返せば、C判定以下の人は他の人と同じ程度の勉強時間を続けていてはずっとその差が埋まらないことを意味します(繰り返しますが実際には勉強の取り組み方でも変わります)。したがって、現時点で合格可能性がボーダーライン以下の人は、ボーダーラインを超えている人たちよりももう1,2段階くらい多く勉強しなければならない、というわけです。
 身近にいる、もしくはSNSなどで勉強の進捗を報告している同じくらいのレベルの大学を志望する、合格が有望な受験生は毎週どれくらい勉強しているでしょうか。その人たちの勉強時間と自分の勉強時間を比較すると、自分がクリアすべき勉強時間がわかります。
 このように考えると、模試でなかなか良い結果が出ず気持ちが落ち込んでいる受験生も、よい判定が出て気が緩みかけている受験生も気を引き締めて勉強できるのではないでしょうか。ボーダーラインを下回っている人にとっては、とりあえずこの時間数を超えれば着実に差を埋められるという手頃な短期的目標ができ、合格可能性が高い人にとっては、B判定でもコンスタントに走り続けないと追い抜かされるという危機感が生まれるからです。
 勉強を継続するためには、勉強時間で常に過去の自分を超えようという自分の中だけの意識ももちろん大切なことですが、他の受験者と比べた相対的な勉強時間で他人を上回ってやろうという、こんな毎日の小さな競争意識も役立つはずです。
記:国語科 木下直樹