所ジョージと大学入試数学

 私は子どもの頃,大がつくほどのテレビっ子で,勉強そっちのけでテレビばかり観ていました。特に,好きだったのがクイズ番組でした。昨今のクイズ番組は,結局のところ同じようなものばかりのような気がしますが,私が小学生だった1990年代(これで私のおよその年齢がバレますが)は,多種多様なクイズ番組がありました。
 クイズ番組の中で一番好きだったのが,「マジカル頭脳パワー!!」という番組でした。「マジカルバナナ」で一世を風靡した番組と言えば,お分かりになる方もいらっしゃるかもしれませんが,この番組は元来,クイズ番組でした。この番組で出題されたクイズは,知識を問うものではなく,ひらめきや発想力を必要とするものでした。放送終了から20年以上経った今でも,この番組で出題されたことのあるクイズを見かけることがあります。
「マジカル頭脳パワー!!」の解答者の1人が,所ジョージさんでした。最近では,ただVTRを見ている人という印象をもっている方が多いと思われますが,私が子どもの頃の所さんはもっとアクティブでした。冴え渡る解答を連発し,毎回のようにトップ賞を獲っていく所さんは,小学生の私にとっては憧れの的であったのです。
 あるとき,所さんが問題を見る前に正解を答えてしまうということがありました。所さんは「予知能力だ」と自慢気におっしゃっていましたが,本当に予知能力を使って正解したわけではありません。このときの放送日は5月の上旬で,出題された問題の答えは「こいのぼり」でした。つまり,放送日から考えて,その時期に関係が深いものが出題されるだろうと,所さんは予想していたのです。この他にも,所さんは勘で答えることが多かったのですが,単なる当てずっぽうではなく,出題者である番組スタッフがどのようなことを考えそうか,常に意識していたといいます。
 大学入試は,他の受験生との闘いであることは当然ですが,同時に,出題者との闘いであることも忘れてはなりません。共通テストや国公立大学の2次試験の数学では、「誘導に乗る」力が求められることが少なくありません。ですから、問題を解くにあたって、日頃から「出題者は何をしてほしいのか」を考えることも大切となってきます。
 さらに、国公立大学の2次試験の数学は、出題者だけでなく、採点者のことも意識しなければなりません。「解ける」だけでは不十分で、「解けたことが採点者に伝わる」ことが必要なのです。「どのような答案を書いたら採点者は納得してくれるか」を考えることも、数学の勉強の一つと言えます。
記:数学科主任 新保幸希