記憶の奥義

どの教科・科目であろうとも暗記事項というのはあるもので、基本的な定義、事例、発想などを記憶しておいて、それを応用問題に適用して解くというのが解答のアプローチではあります。しかし、この暗記というのが難しい。文科系志望の人は自分は文科系だから暗記は苦手なのだと呟き、理科系志望の人は自分は理科系なので暗記は苦手なのだという。体育系、芸術系志望の人も同じことをいいます。要するにみんな暗記は苦手だと思っているわけで、他人に博覧強記と思われている人も、自分ではどうも物忘れが多くて困ると思っています。それでも何かしらの暗記が必要なことは確かなので、書店には記憶術とか脳科学で記憶を強くする本などがならぶことになります。国語科としても語彙であったり、文法、句法、文学史、段落の構成、比喩の方法などやはり暗記せざるをえません。
ずいぶん古くなりますが、NHK「ためしてガッテン」に「記憶の奥義」という特集があり、そこでは、般若心経を6時間で覚える実験がありました。ここでの奥義は、

1 間隔をあけて練習する。
2 覚えたらすぐに寝る。
3 思い出す訓練をする。

というものでした。どうということはなさそうですが効果は歴然としていました。奥義を伝えられたAチームは6時間でほぼ全員が全文字を覚えたのに対し、伝えられなかったBチームは全文字覚えられたのは一人だけで、たいていの人はかなり少ない文字数となりました。
このときの学習の方法には、

1 Aチームは一時間学習するごとに休憩をとったのに対し、Bチームは連続して学習。
2 Aチームは学習が終了したら係員がすぐ寝るように指示して睡眠したのに対し、Bチームはその後も学習をつづけ、睡眠前はおやつを食べながら、団欒のひとときを過してから睡眠。
3 Bチームはひたすら書き写し、唱えて暗記しようとしたのに対し、Aチームは赤、緑の透明シートで一部分を隠しながら自分でテストをする。

といったちがいがありました。学習時間そのものはBチームのほうが多かったにもかかわらず、効果はAチームが圧倒的でした。
これを受験勉強に応用するとすれば、やるべきことは簡単で、
1 暗記したいものは寝る前に主としておこなう。
2就寝前の休憩時間は作らない。
3 50分学習したら、10分休憩するという授業のパターンを自習でも遵守する。
4 単語集や教科書をじっと見たり、見ながら書き写したり、読みあげたりするのではなく、テスト→答え合わせ→間違い直し→再テストをくりかえす。

というまあ、よくある地味な学習ということになります。
しかし、日常での実行はとても難しいものです。暗記練習をしてすぐ寝るといわれても、勉強をおわったら寝るまえにSNSだの、youtubeだのを見て一休みしたい。つい、スマホを覗きながら寝落ちしてしまう。ときどき休憩をいれるといっても、なんだか勿体ないような気がして、集中力がつづかないのにダラダラと続けてしまう。休憩をはじめたが最後、学習時間よりも長くなってしまう。要するについサボりたくなる誘惑にどれだけ抵抗できるか、ということで結局常識に帰結するのでした。
記:国語科主任 佐谷健児