音読の効用(1)

皆さんは、学校の英語の先生から音読をするよう言われたことはありますか。クラズに通っている生徒に聞いてみると、大体の生徒から「ある」という返事が返ってきます。音読は英語力向上のために重要です。一方で、「音読がなぜ重要か、音読を行うとどうなるかが分からないと音読をする気にならない」という人もいると思います。又どのように音読を行うのかを知りたい人もいるはずです。そこで、上記についてまとめてみました。

受験生を含め、英語力を上げたいと願う人の最終的な目標は、「英語を速く正確に読む、聴く」「英語で自分の言いたいこと、書きたいことを正確に表現する」、つまり、速く正確なインプット、アウトプット能力の獲得に集約されます。音読には、インプットとアウトプット両方の作業が含まれているため、英語力を総合的に向上させる上で非常に有効なトレーニング方法です。英文の構造や意味内容を考えながら繰り返し声に出して読むことで、リーディング力、リスニング力が上がります(リスニングが弱い原因の殆どはリーディング力不足です)。声に出すことで英語独特の抑揚、リズムが身に付きます。繰り返し発話することで、音読した英語表現が記憶され、スピーキング、ライティングに役立ちます。

英語が苦手な人に「英語が出来るようになるにはどうすればいい?」と尋ねると、多くの人は「単語を覚える」「文法をマスターする」と答えます。間違ってはいないのですが、それだけでは不十分です。「単語」「英文法」は英語が出来るようになるための初歩の初歩です。「単語、文法を仕上げた」という状態は、野球に例えると、「バットとグローブを買った」段階です。バット、グローブを買っただけで野球が上手くなるわけがありません。野球が上手になりたければ、購入したバットとグローブを使って、素振りや守備練習を数多くこなさなければいけません。単語、文法も英語の「道具」に過ぎず、これらが分かったからといって、スラスラ英語が読めるわけでも、リスニングが楽になるわけでもありません。できるようになるには、単語、文法という「道具」を使って、英語を何度も読み聴きして自分の頭に英語の処理方法を刷り込むことが必要です。体が自然に反応できるようになるまで素振りや守備練習を何万回と行うように。勿論、バットとグローブが無ければ野球ができないのと同じように、単語、文法の知識がないと、英語は出来るようになりません。ただ、単語、文法を仕上げると達成感に浸り、次の段階である「音読」に進まない人が少なからずいます。まあ、気持ちは分からないでもないです。単語、文法を仕上げるだけでも相当な時間がかかります。これが「初歩の初歩」だとすれば、英語ができるようになるには、この先どれだけやらなければいけないか見当もつかなくなります。そう考えると、英語というのは本当に習得するまで時間がかかる科目です。ですが、そこで止まっていては進歩はありません。次の段階、「音読」に進まなくてはなりません。(続く)
記:英語科 原貴弘