受験生に必要な運動とは?記憶・学習機能に与える効果について

運動が脳の働きを高めることは多くの研究で明らかにされていますが、高齢者対象の研究は多くある一方で、健康な若年成人(20歳前後)での検討は少ないのが実情です。IFもなくJCIも0.380とあまり引用のない雑誌ではありますが、受験生にはピンポイントな研究と思われましたので、一部を抜粋して紹介します。

『Effects of a single exercise workout on memory and learning functions in young adults—A systematic review』

Transl Sports Med. 2021;4:115–127

雑誌:Translation Sports Medicine, IF -, JCI 0.380

『若者が運動トレーニングを1回行うと、記憶・学習機能に対して効果があるか?(Systematic review)』

●方法:
・2009年から2019年の間に出版されPubMedに登録された研究から検索
・運動介入を用いたランダム化比較試験
・18歳から35歳を対象(男女は問わない)
・特定の疾患や症状を持つ被験者を対象とした研究は除外

●結果:
・計13の研究を系統的にレビュー(コクラン「Risk-of-Bias2」実施)
・ランニングや中負荷以上のエルゴーメータ運動などの中強度以上の有酸素運動をすると、学習記憶、集中力、長期記憶、作業記憶、言葉の流暢さが改善した。
・効果は30-120分間持続した。

●考察:
このシステマティックレビューでは、有酸素運動は、学習活動の前や学習活動と密接に関連して運動が行われた場合に、学習能力と記憶への保存を向上させることを示している。
運動は、ドーパミン伝達物質を調節し、ドーパミンの発現を増加させることで、注意と記憶の符号化を促進する可能性がある。動物実験では、高強度の運動により、シナプス後の興奮活性が高まり、長時間の記憶が改善されることが示されている。身体トレーニングは、cAMP-responsive element bindingprotein-1 (CREB-1) と神経細胞の興奮性のレベルに影響を与え、神経細胞を記憶のエンコードに適した状態に導くと考えられる。 また、脳由来好中球因子(BDNF)も記憶機能を促進する可能性がある。

●結語:
このシステマティックレビューは、有酸素運動、身体運動、そして学習前の短い休息が、若年成人の注意力、集中力、学習・記憶機能を改善することを強く示唆しています。最適な運動戦略を特定することで、学生の学習・記憶力を高めることができるかもしれません。

当然、色々限界のある研究ではありますが、学習に対して運動はnegativeなものはありませんし、むしろ別視点であるストレスコントロールにもpositiveです。成績に伸び悩む受験生は運動を積極的に取り入れましょう!
記:副校長・校医 福島 拓