遠回りは面倒だが役に立つ ~英語リスニング編②-4 若さの特権~ 

ようやく読み終えてもサスペンス小説の余韻が続いて、観光する気にもならない。本屋へ行ってはシェルダンの他の小説を探しまわった。洋書を置いてある本屋は見つからず、「明日があるなら」早くジャカルタに帰って別の作品を見つけたいと願うばかり。あれほど読書に没頭したのは生まれて初めてのことだった。
カリマンタンは殆ど何も見ないで帰ってきたけれど、読書の楽しさを知る思い出に残る旅になった。

さらに余談になるけれども、その時は「早く先を読みたい」という気持ちとともに「いつまでもこの小説世界に浸っていたい。いつまでも読み続けて、読み終わりたくない」という思いが同居していた。だから、早く読み進めたい気持ちを抑えて、一字一句ゆっくりと味わうように読んだ。どの文も決して飛ばし読みしないように、はやる心を押しとどめるように敢えて音読する程度の速さで読んでいった。

要するに、一遍の物語を味わいつくしたかったのだ。その意味でも読書の楽しみを知る良い機会になった。時間を忘れて、ただひたすら読書をして小説世界に没頭できるのも若さの特権だ。三日三晩、ひとつの小説と付き合えた経験は自分の人生にとって貴重だったと思う。
続く・・・
記:英語科主任 佐々木晋