国公立大入試の選抜多様化について(一般入試の定員が半分になる可能性も?)

 早いもので、もう1月15・16日に大学入学共通テスト、私立大学の一般選抜入試、2月25日からは国公立大学の前期試験と進み2022年の大学入試も佳境を迎えます。

 ところで、かなり個人的な感想と意見が混じりますが、最近の大学入試に関しては、個人としてやや不満(不安?)を感じてしまうのです。多様な受験のあり方を模索することは大いに結構だとは思うのですが、そこにはおのずと程度の問題が横たわっていて、超えるべきではない一線があるように思うのです。私の頭の中にある「入試」の基本は基礎学力の判定であり、当該生徒に大学教育を施すに足る基礎的な学力が備わっているや否や、という事が第一に重んじられるべきだと思うのです。それが全てではないことは理解できますが、それが無くても良いとは思えません。確かに従来の大学入試は知識偏重の傾向が強すぎたという事も理解できますが、基礎的知識を問う事が、あたかも教育をゆがめているかのような風潮には組できません。

 従来、国公立大学の一般選抜は前期試験と後期試験に分けて実施する大学が多かったのですが、ここへきて後期試験を取り止めて、その定員を総合型選抜と学校推薦型選抜に移す流れが続いているようです。元来、分離分割方式による後期試験は、当該大学を志望する生徒に対して受験機会を複数回与えることに意義があったのではないかと記憶しています。その意義は失われてしまったのでしょうか。

 総合型選抜(旧AO入試)は、22年入試では 国公立大学176大学のうち、過去最多となる102大学335学部で実施されるようです。募集人員もこれまでで最も多く、国立大学では6291人で全体の6.6%を占めるところまで到達しています。新たに宮城教育大学、埼玉大学、富山大学、名古屋工業大学、奈良女子大学、長崎大学、大分大学で取り入れることになりました。また公立大学でも1122人で全体に占める割合は3.5%にまでなっています。福島県立医科大学、大阪公立大学(大阪市立大学と大阪府立大学が統合)等が取り入れます。それらを総合すると、総合型選抜は10年間で2倍以上に増加したことになるのです。

 又、国公立大学の学校推薦型選抜は、総合型選抜ほどの増加はしていませんが、それでも22年入試の募集人員は2万585人で過去最多となるようです。国立大学では京都工芸繊維大学、公立大学では三条市立大学、大阪公立大学等が新たに導入します。一昔前からすれば、国公立大学で総合型選抜や学校推薦型選抜が拡大していることは驚き以外の何物でもありませんが、こうした流れはさらに広がる方向のようです。

 いわゆる「偏差値教育」への批判なども背景に、学力とともに多様な資質を持った学生を受け入れることが大学にとって課題ではありました。総合型選抜や学校推薦型選抜の広がりは、まさにそうした文脈の延長線上にあるようです。

 国立大学協会では08年に初めて、国立大学全体としてAO入試(総合型選抜)と推薦入試(学校推薦型選抜)の合格者が占める割合を、「入学定員の5割を超えない範囲にする」ことを掲げました。つまり、5割まで引き上げることを可能にしたわけです。もちろん、現時点ではまだ5割にはほど遠く、総合型選抜と学校推薦型選抜の合格者が入学者に占める割合は、私立大学の方がはるかに高いのですが・・・。

 この風潮・この傾向を続けていけば、各国公立大学の入学定員の5割に近づくのも、それほど遠い話ではなさそうです。個人の願望としては、せめて国公立大学だけは、総合型・推薦型の入学者が5割には達しないことを期待したいのですが・・・

記:情報室長 高縁博