コロナ禍の下の著作権

コロナ禍の下、大学や予備校のオンライン授業は定着してきましたが、「授業の録画、撮影は禁止」「ネットにアップしたらダメ」等の規制を掛けられた場合、法的にはどの様なことになるのでしょうか・・・

学生にとっては、レポートを書く時やテスト勉強をする時には保存しておかないとかなり不便です。
こんな状況下で、うっかり保存してしまうと、本当に著作権違反になるのでしようか? 今のようなコロナ禍ではとても重要な問題かもしれません。

一般に、大学の授業で映される資料の著作権は、各大学の著作権規定にもよりますが、資料を教員が作成した場合には、大学ではなく教員に著作権があるはずです。そして「授業動画の撮影」も、動画という著作物の「複製」行為と考えられますから、原則として著作権者の許諾がなければ当然できないわけです。

それでは、禁止されているにもかかわらず、自分の学習のために動画等を撮った場合でも、著作物については、原則として 著作権者の許諾がなければ利用することはできませんので、著作権違反となってしまうのでしょうか。
                                
実は、日本の著作権法では他人の著作物についても例外的に著作権者の許諾なく利用(コピーなど)できる場合がいくつか定められており、それに該当すれば著作権者の許諾がなくとも利用することができるのです。このような例外規定は「権利制限規定」と呼ばれています。

学生が「自分の学習(復習)のため」という目的で複製する行為は、権利制限規定の一種である「学校その他の教育機関における複製等」(同法35条1項)に該当し、著作権侵害にはならないのです。

しかし、そのような権利制限規定に該当する行為を、大学や教員が規則等で禁止している場合はどうなるのでしょうか。
つまり、「著作権法上の権利制限規定に該当する行為を規則等で禁止した場合、このような規則等は有効なのか」という問題です。分かり易く言うと「法律でやって良いと言っているのに、いくら著作権者であっても、それをダメと言えるのだろうか」ということなのです。

この点については、権利制限規定の立法趣旨などから総合的に考える必要があるはずです。 著作権法35条で、「教育の重要性」や「非営利の教育が持つ公益性」を根拠にして、特別に権利制限が認められているわけですから、一律に学生による復習目的の複製を禁止することは権利制限規定の立法趣旨に反するものと考えられそうです。 したがって、大学によって学生が自分の学習のために動画等を撮影する行為を禁止する規則等は無効である可能性が高く、学生が自分の学習のために、そのような行為を行ったとしても著作権侵害はもちろん、規則違反にも該当しないのかもしれません。
記:情報室長 高縁博