古文の現代語訳は、単語ごとに現代語に”置き換える”ように訳す

 古文を現代語訳するとき、雰囲気でなんとなく訳していませんか。古文を現代語に訳す問題は入試で頻出ですが、この手の問題では、古文を単語ごとに分けて(いわゆる品詞分解をして)逐語的に訳すことがポイントです。

 例として、2020年度の北大の入試問題と、大学発表の解答例を見比べてみます。

問一 傍線部ロ・ハ・ホを現代語訳に改めよ。
ロ 流れての物語ともなりぬべきこと
ハ いといみじく物ゆかしげなるは
ホ すべて道もさりあへず
(北海道大学2020年 国語 問題三より)

◇大学発表の解答例
ロ 後代までの語り草ともきっとなるであろう
ハ (御禊を)とても見たそうな様子であるのは
ホ まったく道も避けきれない

 繰り返しになりますが、古文を現代語訳する問題は、品詞分解して逐語訳するのが基本です。まず設問になっている部分を品詞分解して、参考までにそれぞれの単語の訳を確認してみます。

ロ 流れ/て/の/物語/と/も/なり/ぬ/べき/こと
→「流れての物語」とは、「後の代まで伝わる話、語り草」という意味の名詞。「と」は格助詞で「と」と訳す。「も」は係助詞で「も」と訳す。「なり」はラ行四段動詞「なる」の連用形で「~になる」の意。「ぬ」は強意の助動詞「ぬ」の終止形で「きっと」などと訳す。「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形で「だろう」と訳す。
 以上を合わせて逐語訳すると「後の代まで伝わる語り草ともきっとなるだろう」となります。この答案は大学の解答例とも一致しており、古文の現代語訳は逐語訳を基本として解答する必要があることがわかります。
 残りの設問も、品詞分解をして逐語訳することで解答例のような現代語訳ができ上がります。

ハ いと/いみじく/物ゆかしげなる/は/、
→「いと」は副詞で「たいそう」などと訳す。「いみじく」は形容詞「いみじ」の連用形で「たいそう」と訳す。「物ゆかしげなる」は形容動詞「物ゆかしげなり」の連体形で「(なんとなく)見てみたそうだ」と訳す。「は」は係助詞で「は」などと訳す。
 以上を合わせて訳を作ると「たいそう見てみたそうであることは」となります。

ホ すべて/道/も/さり/あへ/ず/。
→「すべて」は副詞で後ろに否定語を伴い「まったく~」などと全否定で訳す。「道」は名詞でそのまま「道」と訳す。「も」は係助詞で「も」と訳す。「さり」はラ行四段動詞「避る」の連用形で「避ける」と訳す。「あへ」はハ行下二段動詞「敢ふ」の未然形に打消の助動詞「ず」がついて「~しきれない」と訳す。
 以上を合わせると「まったく道も避けきれない」となります。

 以上のように、古文を現代語訳するタイプの設問では、品詞分解をして単語ごとに現代語に置き換えるように訳すことが基本であり、大切なポイントです。古文を単語ごとに正しく分けられるには何よりも用言や助動詞の活用に習熟していなければなりません。活用がわからないと、単語の切れ目が判断できないからです。さらに正しく訳せるためには、辞書を引いて基本的な語彙とその意味を身につけておかなければなりません。したがって、日常の勉強の中で古文を現代語訳するときには、「なんとなくこんなニュアンスだろう」といい加減にやるのではなく、一語一語にこだわって訳す厳密さが重要であるように思います。
記:国語科 木下直樹