木こりのジレンマ

 イソップ寓話に「木と斧」という話があります。次のような話です。

木こりが刃こぼれした斧で木を切っていました。旅人が木こりに尋ねました。「刃こぼれした斧で木を切るより、まず斧を研いだ方がいいですよ。」木こりが答えて言うことには「木を切るのに忙しくて斧を研いでいる暇なんてないのです。」

 上記の話は「木こりのジレンマ」と言われてたりします。ジレンマとは「ある問題に対して2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態。葛藤。(Wikipediaより)」という意味です。つまり、木こりは木を切るのをやめて斧を研ぐ(その場合、斧を研いでいる間は木を切れないという不利益がある)か、斧を研がないまま木を切り続ける(その場合、刃こぼれした効率の悪い斧で木を切らなくてはならないという不利益がある)かという2点で板挟みになり、後者を選択したわけです。
 この寓話は受験にも通じる部分があります。例えば、11月の受験生。流石に過去問演習をして時間制限の中で解く実戦力をつけていかなければならない、でもこの分野については基礎的な知識に若干の不安を感じる……。このまま過去問演習を優先すべきか、ちょっと教科書に戻って基礎的な内容を再確認すべきか。
 もちろん抜けている基礎的な内容の程度にもよりますが、答えははっきりしている気がします。誰に言われたかは忘れましたが、自分が受験生のときに聞いて印象に残っている言葉に「基礎に立ち返るのに遅すぎることはない、基礎に戻ることを恐れるな」というのがあります。この言葉に触発されて、受験生の秋(ちょうどこの時期)になって学校の数Ⅱの教科書の三角関数の分野を解き直ししたのをよく覚えています。
 寓話は現代に通じる普遍的なテーマが多くて面白いですね。参考になれば幸いです。
記:国語科 木下直樹