「学びは成長」③
外部模試の結果が出始める秋、合格圏にはほど遠いことが現実的な数字として返ってきます。保護者は「合格が見込めないのであれば受験はさせない」という意向を本人にも明言するようになりました。本人にとってこれほど逃げ出したくて、つらい時期はなかったのではないかと思います。
いよいよ受験も差し迫った10月も半ばあたりでしょうか。授業開始時に宿題をチェックしていると、なかなかの難問の解法を、いつになくスラスラと説明します。
何回か続くそのやりとりに「解法の丸暗記だけでも十分立派」だと感じていたのですが、それだけではなく、しっかりと類題や応用演習まで解けるレベルまで学習してくるようになったのです。自らの意思で!
のちに保護者から聞いた話ですが、ある時を境に家庭での学習も、本当に長時間、一所懸命取り組むようになったそうです。
「挑戦したい」と、強い熱意で保護者を説得し北嶺中を受験、見事合格を勝ち取りました。しかし彼は北嶺中への進学を選択せず、こう言ったそうです。
「今回の合格は自分の力で勝ち取ったものではない。あくまで周囲の後押しがあったからだ。次は自分の力で、自分の意志で札幌南に合格する。」
公立中に進学した彼を、その後私が指導したのはほんの一時期。はにかんだ優しい笑顔の坊主頭を撫でるのは、どこか戦友との再会のようでした。逞しく成長した彼は、“有言実行”、トップクラスの成績で南高に進学し、その後の荒波も力強く乗り越えています-。
誰にでも、成長のきっかけとチャンスは本当にすぐそこにあると思うのです。しかしそのことに気づいたり、自分のものとして掴んだりすることは容易ではありません。彼のスイッチにしても、結局のところ何がきっかけだったのか全く分かりません。
みんなにとってもそのポイントが今なのか、1年後なのか10年後なのか、もちろん受験や、何かの目標に向かっているときにそのきっかけが訪れるに越したことはありません。でも、人生、いつから頑張っても良いと私は思います。遅いなんてことは、決してないのです。伸び悩んでいると感じたときは、“大きな羽ばたきへの長い助走”だと考えて前を向きましょう。成長や成功のベクトルだって、無限の方向性があるんです。
自分を信じて、周りを信じて、頑張ってください!
お子さんの成長を見守る保護者皆さんだけでなく、自分の将来や成長について不安を抱いたり、疑問を感じたりするみんなの、少しでもきっかけや救いになれば幸いです。
終わり
記:小中学部 兵藤晋平